日本においてお酒は古くから文化や生活に深く根付いていますが、それと同時に法律によって厳格に管理されている物品でもあります。自家製の酒造り、いわゆる「密造」という言葉を耳にすることもありますが、具体的にどのような行為が法に触れるのか、その正確な定義を理解している人は意外と少ないかもしれません。単なる趣味の延長と考えて行っていることが、実は重大な法律違反にあたる可能性もあります。本記事では、日本における酒税法に基づいた密造酒の定義から、許可されている範囲、そして違反した場合の罰則に至るまで、知っておくべき知識を網羅的に解説していきます。
目次
日本国内における密造酒の定義と酒税法の基本原則
日本において、密造酒とは「酒税法に基づいた製造免許を持たない者が製造した酒類」のことを指します。酒税法は、酒税の確実な徴収と酒類の品質・安全性を確保することを目的として制定されています。この法律において、お酒を造る権利は国によって厳しく制限されており、あらかじめ税務署長から製造免許を受けた業者以外が酒類を製造することは、たとえ自分自身で飲むためであっても原則として禁止されています。この原則を無視して無免許で酒類を製造する行為そのものが、密造として定義されることになります。
アルコール分1度以上の飲料が法的な酒類に該当する
酒税法における「酒類」の定義は、アルコール分1度(1パーセント)以上の飲料を指します。ここで重要なのは、完成した液体が最終的に1度以上のアルコール分を含んでいる場合、それはすべて法的な酒類とみなされる点です。市販されているノンアルコール飲料の多くが0.00パーセントと表示されているのは、この1度という基準を明確に下回ることで、酒類としての法規制を受けないようにするためです。逆に言えば、発酵の過程で自然にアルコールが発生し、それが1度を超えてしまえば、意図的かどうかにかかわらず酒類の製造に該当してしまいます。
製造免許を持たずに酒を造ることが密造となる理由
お酒の製造には、高度な技術と衛生管理が求められます。国が免許制を敷いているのは、単に税金を取るためだけではなく、粗悪なアルコールの流通によって国民の健康が損なわれるのを防ぐためでもあります。また、酒税は国にとって重要な財源の一つであり、無免許での製造が横行すると、正規のメーカーが不利益を被り、適正な徴収が困難になります。そのため、法律では製造の「場所」と「品目」ごとに免許が必要であると定めており、それらを満たさないすべての製造行為を密造とみなして厳しく規制しているのです。
自家消費目的であっても無免許製造は禁止されている
よくある誤解の一つに、「自分で飲む分には構わないのではないか」というものがあります。しかし、現行の日本法律では、個人的な趣味や自家消費であっても、免許なしに酒類を製造することは認められていません。例えば、米や麦、糖類を原料として酵母を加え、発酵させてどぶろくやビールのような飲料を作る行為は、たとえ販売を目的としていなくても法律違反となります。諸外国では自家醸造が一定の範囲で認められている国もありますが、日本では一滴であっても無免許製造は密造という定義から外れることはありません。
酒税法における製造とみなされる行為の範囲
酒税法でいう「製造」とは、単に原料からお酒を造り出すことだけを指すのではありません。既存の酒類に別の物質を混ぜて、新たな酒類を作り出す「混和」と呼ばれる行為も、原則として製造に含まれます。ただし、後述する特例を除き、ベースとなるお酒に何かを混ぜてアルコール度数を変化させたり、新たな風味を加えたりする行為は、法律上の製造行為として扱われます。このように、製造の定義は非常に幅広く設定されており、一般消費者が安易に手を出せる領域ではないことが法律によって示されています。
密造酒の定義に該当しない例外や混和のルール
酒税法には厳格なルールがありますが、一般家庭での楽しみとして一定の条件を満たした場合に限り、製造行為とみなさないという特例が設けられています。これが一般的に「梅酒作り」などが認められている理由です。しかし、この特例を受けるためには、使用するお酒の度数や混ぜる材料について、非常に細かな規定を守らなければなりません。これらの条件を一つでも踏み外すと、たとえ悪意がなくても密造酒の定義に該当してしまう可能性があるため、正しい知識を持つことが不可欠です。
家庭で梅酒などの果実酒を作る際の特例措置
家庭で果実酒を作る行為が認められているのは、それが「消費者が自分で飲むために、既製の酒類と物品を混和する場合」に限定されているからです。この特例が適用されるためには、まず使用するお酒のアルコール分が20度以上であることが絶対条件となります。また、混ぜる材料にも制限があり、米、麦、あわ、とうもろこしなどの穀類や、これらを原料とした麹は混ぜることができません。これは、混和の過程で新たなアルコール発酵が起こるのを防ぐためです。さらに、作った果実酒を他人に販売したり譲渡したりすることも禁止されています。
混和が禁止されている物品や度数の制限
前述の通り、20度未満のお酒を使用して混和を行うことは、法律上認められていません。例えば、日本酒やワインなど、比較的度数の低いお酒に果実を漬け込む行為は、実は密造に該当する恐れがあります。これは、度数の低いお酒の中では残存した糖分などが再発酵しやすく、新たなアルコールが生成される可能性が高いためです。また、ブドウや山ブドウなどの果実を漬け込むことも禁止されています。これらは単体で発酵しやすく、ワインを密造することに繋がるため、特例の対象から意図的に外されているのです。
どぶろく特区制度と許可された製造の仕組み
近年、地域振興を目的とした「構造改革特別区域(どぶろく特区)」という制度が注目されています。これは、特定の地域において、自ら生産した米を原料として、自分が経営する飲食店などで提供する場合に限り、小規模な酒類製造免許の取得が可能になるという制度です。この制度を利用して造られるどぶろくは、適正な手続きを経て免許を受けた上で製造されているため、密造にはあたりません。ただし、あくまで免許取得のハードルが一部緩和されているだけであり、完全に無許可で造って良いという意味ではない点に注意が必要です。
密造酒の定義と法規制に関する情報のまとめ
密造酒の定義や法律についてのまとめ
今回は密造酒の定義についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・日本において密造酒とは酒税法上の製造免許を持たずに造られた酒類を指す
・アルコール分1度以上の飲料を製造する行為はすべて免許が必要な対象となる
・自分で飲むための自家消費目的であっても無免許での製造は法律で禁止されている
・酒税法には酒税の確保と国民の健康保護という二つの大きな目的がある
・無免許での酒類製造には10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる
・家庭での果実酒作りは一定の条件下でのみ製造行為とみなさない特例がある
・果実酒を作る際はベースとなるお酒のアルコール分が20度以上でなければならない
・米や麦などの穀類を既製のお酒に混ぜる行為は再発酵の恐れがあるため禁止されている
・ブドウや山ブドウを漬け込む行為はワインの密造に繋がるため特例の対象外である
・作った果実酒を他人に販売したり提供したりすることは法律によって認められていない
・どぶろく特区などの制度を除き個人が自宅でどぶろくを醸造することは違法である
・完成した飲料にアルコールが含まれていなくても発酵の過程で発生すれば対象となる
・既存の酒類に別の物質を混ぜて新たな味を作る混和も製造行為の一部に含まれる
・酒類の製造免許は製造する場所や品目ごとに税務署長から受ける必要がある
・法律の不知は処罰を免れる理由にはならないため正確な定義の理解が重要である
酒税法における密造の定義は非常に厳格であり、私たちの身近な生活の中にも注意すべき点が多く存在します。趣味で何かを漬け込んだり作ったりする際には、まずその行為が法律に抵触しないかをしっかりと確認するようにしましょう。正しい知識を身につけることが、不要なトラブルを避け、安心してお酒を楽しむための第一歩となります。


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