
日常的に着用する衣服において、ボタンは単なる開閉具としての機能だけでなく、その衣服全体の印象を大きく左右する重要な要素です。
ネイビーのジャケットにブラウンのボタンですとか、一番わかりやすいのはメタルボタンのブレザーなどでしょうか。
既製服では、特にファストファッションなどで購入した衣服には、コスト削減のため、プラスチック製の安価なボタンが使われていることが少なくありません。このようなボタンは、衣服の素材やデザインが良くても、全体をチープに見せてしまう原因となることがあります。
しかし、この印象を劇的に変える有効な手段が「ボタンの付け替え」です。
ボタンを上質なものに付け替えるだけで、衣服はまるでオーダーメイドのような高級感と洗練された印象を纏い、「高見え」を叶えることができます。本記事では、ボタン付け替えによって高見えを狙うための基本的な知識から、高見えボタンの選び方、そして美しく機能的にボタンを付け替えるための実践的なテクニックまで、幅広く詳細に解説します。この情報を参考に、ご自身の衣服をワンランク上のアイテムへと昇華させてみましょう。
目次
ボタン付け替えで高見えを狙うための基本
ボタン付け替えで衣服を高見えさせるためには、まずボタンが高見えに与える影響を理解し、適切なボタンを選び、必要な道具を準備することが重要です。この基本を押さえることで、成功へと繋がる第一歩を踏み出せます。
ボタンが高見えに与える影響
ボタンは、衣服の面積としては小さなパーツですが、その質感やデザイン、素材感は、衣服全体の印象に決定的な影響を与えます。安価なプラスチックボタンは、しばしば光沢が不安的であったり、デザインが平坦であったりするため、たとえ上質な素材の衣服であっても、その魅力を半減させてしまうことがあります。
特に、ジャケットやコート、シャツなど、ボタンが表に出る衣服においては、ボタンの品質が直接的に衣服の品格を左右する要因となります。
高見えするボタンへの付け替えは、衣服のディテールへのこだわりを示す行為であり、着用者のファッションセンスを際立たせます。高級ブランドの衣服が上質なボタンを採用していることからも、ボタンが衣服の価値を高める重要な要素であることが伺えます。
高見えボタン選びのポイント
高見えを叶えるボタンを選ぶ際には、素材、色、デザイン、そしてサイズが重要なポイントとなります。
- 素材:
- 天然素材:
本水牛、貝(白蝶貝、黒蝶貝など)、ナット(ヤシの実)、タグア、木、革などは、自然な風合いと独特の光沢や模様を持ち、高級感を演出します。特に本水牛や貝ボタンは、その一つ一つ異なる表情と深い輝きが、衣服に洗練された印象を与えます。 - 金属素材:
真鍮、ピューター、銀メッキ、金メッキなどは、重厚感と輝きがあり、クラシックなブレザーやコートに最適です。ヴィンテージ感のある加工が施されたものも高見え効果が期待できます。 - 加工素材:
ガラスボタンや質の良い樹脂ボタンは、透明感や独特の色彩、形状で個性を演出します。ただし、プラスチック製を選ぶ場合は、安っぽく見えないよう、厚みや光沢、色味に注意して選びましょう。
- 天然素材:
- 色:
衣服の色とトーンを合わせることで統一感が生まれ、上品な印象になります。逆に、衣服の色と対照的な色を選ぶことで、ボタンをアクセントとして際立たせることも可能です。金属ボタンであれば、ゴールドやシルバーが高級感を高めます。 - デザイン:
シンプルで洗練されたデザインは、どんな衣服にも合わせやすく、上品さを保ちます。エンブレムや彫刻が施されたボタンは、個性を演出しつつ、重厚感を加えることができます。 - サイズ:
衣服のバランスに合ったサイズのボタンを選ぶことが重要です。大きすぎるとバランスを崩し、小さすぎると存在感が薄れてしまいます。元のボタンと同じか、わずかに大きくする程度が失敗しにくいでしょう。
衣服とボタンの相性を見極める
衣服の素材、デザイン、用途に合わせたボタン選びは、高見えを成功させる上で不可欠です。
- 素材との調和:
ウールやツイードのジャケットには、本水牛や金属ボタンが重厚感を添えます。シルクやリネンのシャツには、貝ボタンや薄手のナットボタンが軽やかさと上品さを与えます。衣服の素材感とボタンの質感を合わせることで、自然な高級感が生まれます。 - デザインとのバランス:
クラシックなデザインの衣服には、伝統的な2つ穴・4つ穴ボタンや足つきボタンが似合います。モダンなデザインには、シンプルながらも個性的なボタンや、色のアクセントになるボタンを選ぶと良いでしょう。 - 用途への配慮:
フォーマルな衣服には、控えめながらも上質なボタンを、カジュアルな衣服には、遊び心のあるデザインや素材のボタンを選ぶことで、全体のバランスが取れます。
ボタン付け替えに必要な道具
ボタン付け替えに必要な道具は、特別なものではなく、基本的な裁縫道具で対応可能です。
- 新しいボタン:
高見えを叶えるための主役となるボタンです。 - 縫い針:
衣服の厚さやボタンの穴の大きさに合わせて選びます。薄手の布には細く短い針、厚手の布には太く長い針が適しています。
針選びに関しては上記が選ぶ基準となりますが、手の大きさや、使いやすい長さを選んでいただければ問題ないかと思います。
私は手が小さいので、基本的に服地の厚みにかかわらず短めの針を使用しています。 - 糸:
ボタン付けには、丈夫で切れにくい「ボタン付け糸」が最適です。衣服やボタンの色に合わせたものを選びます。二本取りにすることで、さらに強度が増します。 - ハサミ:
糸を切るための裁ちばさみや、手芸用の小さなハサミを用意します。 - チャコペン(または鉛筆):
ボタンの位置を正確にマークするために使います。 - まち針:
ボタンを仮留めする際に使用します。 - 爪楊枝やボタンホール用定規:
平らなボタンを付ける際に、衣服とボタンの間に適度な「足(ゆとり)」を作るために使用します。 - リッパーまたは糸抜き:
元のボタンを外す際に、糸をきれいに取り除くために使います。衣服を傷つけないよう慎重に扱いましょう。
高見えボタンの付け替え実践テクニック
適切なボタンを選び、道具を揃えたら、いよいよ実践です。ボタンの種類に応じた縫い方や、高見えさせるための工夫を凝らすことで、プロのような美しい仕上がりを目指せます。
ボタンの種類別高見え付け替え術
ボタンの種類によって、最適な付け替え方は異なります。
- 平らな2つ穴・4つ穴ボタン:
- 「足」を作る: 衣服とボタンの間に爪楊枝やボタンホール定規を挟んで縫い付けることで、ボタンが立ち上がり、立体感と高級感が生まれます。これにより、ボタンの開閉もスムーズになります。
簡易的に足を作る方法が上記ですが、縫い付けのテンションを緩めに縫い付けていき、最後にゆるんでいる足部分に糸を巻き付けしっかりとした足を作る方法もおすすめです。 - 糸の通し方:
2つ穴ボタンは平行に通す「二の字」縫いか、「X」字縫い。4つ穴ボタンは「X」字縫い、「=」字縫い、「四角」縫いなどがあります。縫い方のパターンを統一すると、よりきれいに見えます。 - 糸の巻き付け:
縫い終わったら、ボタンと布の間にできた糸の「足」部分に糸を3~4回しっかりと巻き付け、補強します。
- 「足」を作る: 衣服とボタンの間に爪楊枝やボタンホール定規を挟んで縫い付けることで、ボタンが立ち上がり、立体感と高級感が生まれます。これにより、ボタンの開閉もスムーズになります。
- 足つきボタン(シャンクボタン):
- ボタン自体に足(シャンク)が付いているため、糸で足を作る必要がありません。
- シャンクの輪に針を通し、衣服にしっかりと縫い付けます。縫い付ける回数は、ボタンの重さや衣服の厚さに応じて5~7回程度が目安です。
- 力ボタン(裏ボタン)の活用:
- ジャケットやコートなど、厚手の衣服や表地がデリケートな衣服には、裏側に小さな「力ボタン(裏ボタン)」を併用すると、ボタンの強度が増し、表地が傷むのを防ぎます。
- 表のボタンと裏の力ボタンを同時に縫い付けることで、裏地を貫通させずに丈夫に固定でき、高見え効果が高まります。
縫い方の工夫で高見え度アップ
高見えを叶えるためには、ボタンを美しく丈夫に縫い付ける技術も重要です。
- 古いボタンの取り外し: リッパーや糸抜きを使って、元のボタンの糸を丁寧に取り除きます。衣服の生地を傷つけないよう注意しましょう。
- 位置決め: ボタンホールと合わせ、新しいボタンを付ける位置をチャコペンで正確にマークします。まち針で仮留めし、全体のバランスを確認します。
- 裏に糸を出さない縫い方:
- 玉結びを隠す: 縫い始めの玉結びは、ボタンで隠れる位置(ボタンの真下など)か、表地と裏地がある場合はその間に針を通して隠します。
- 最小限の布を拾う: 針を表布の厚みの中、または裏側に最小限の糸(数本の繊維)だけを拾うようにして縫い進めます。裏地がある場合は、裏地まで針を通さないようにすると、既製服のような仕上がりになります。
- 玉止めの処理: 縫い終わりの玉止めも、ボタンの根本の布の奥(表地と裏地の間など)に隠すことで、裏面から見ても縫い目や糸の処理が一切見えない、プロフェッショナルな仕上がりになります。
- 糸の色の選び方: ボタンの色、または衣服の生地の色に合わせた糸を選ぶと、縫い目が目立ちにくく、統一感が生まれて高見えします。あえて対照的な色の糸を選び、デザインのアクセントとすることも可能です。
- 縫い付けの強度: ボタンが外れないよう、しっかりと複数回縫い付けます。平らなボタンの「足」部分への巻き付けも、強度を高める上で重要です。
付け替え後のメンテナンスと保管
ボタンを付け替えた後も、その美しさを長く保つためには、適切なメンテナンスと保管が必要です。
- 定期的な点検: 付け替えたボタンの緩みがないか、糸がほつれていないかなど、定期的に点検しましょう。早期に発見すれば、簡単な補修で対応できます。
- ボタンの素材に合わせた手入れ: 天然素材(貝、水牛など)のボタンは、水濡れや直射日光、乾燥に弱い場合があります。水に濡れたらすぐに拭き取り、乾燥しすぎない場所で保管しましょう。金属ボタンは、曇りや錆びを防ぐために、時々柔らかい布で磨くと良いでしょう。
- 衣服の保管方法: 衣服を保管する際は、ボタンが他の衣服やアクセサリーと擦れて傷ついたり、割れたりしないよう注意します。ボタンを留めて型崩れを防ぎ、ハンガーにかける際は、ボタン部分に負担がかからないようにしましょう。
- 予備ボタンの保管: 衣服に付属していた予備ボタンや、付け替えた古いボタンは、万が一の破損に備えて大切に保管しておきましょう。
まとめ:ボタン付け替えで高見えを叶えるための徹底調査
ボタン付け替えで高見えを実現するポイントのまとめ
今回はボタン付け替えによる高見え効果についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・ボタンは衣服の印象を大きく左右し、上質なボタンへの付け替えで「高見え」を叶えることができる
・天然素材(本水牛、貝、ナットなど)や金属素材(真鍮など)のボタンは特に高見え効果が高い
・ボタンを選ぶ際は、衣服の素材、色、デザイン、用途との相性を見極めることが重要である
・適切な針、丈夫なボタン付け糸、ハサミ、チャコペン、爪楊枝などの道具を準備する必要がある
・平らなボタンを付ける際は、衣服との間に「足」を作り、ボタンが立ち上がるように縫い付けると高見えする
・足つきボタンは、シャンク部分に糸を通し、衣服にしっかりと固定する
・ジャケットやコートには「力ボタン(裏ボタン)」を併用することで、強度を高め、表地を保護できる
・縫い始めの玉結びや縫い終わりの玉止めは、ボタンで隠れる位置や布の層の間に隠すことで、裏に糸を出さずに美しく仕上げられる
・縫い糸は衣服やボタンの色に合わせ、縫い目が目立たないようにすることで、統一感が生まれ高見えする
・縫い付けの強度を確保するため、複数回しっかりと縫い付け、必要に応じて「足」部分を補強する
・元のボタンを外す際は、リッパーなどで丁寧に糸を取り除き、衣服の生地を傷つけないように注意する
・付け替えたボタンの緩みがないか定期的に点検し、素材に合わせた手入れと適切な保管を行うことで、美しさを長く保つことができる
本記事で解説したボタン付け替えのテクニックを実践することで、ご自身の衣服をワンランク上のアイテムへとアップデートできるでしょう。細部へのこだわりは、ファッション全体の印象を高め、着る人の個性を際立たせる力を持っています。ぜひ、お気に入りの衣服に高見えするボタンを付け替え、新たな魅力を発見してみてください。
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