フランスのアルザス地方で生まれた鋳物ホーロー鍋「ストウブ(Staub)」は、プロの料理人から家庭のキッチンまで幅広く愛用されている調理器具です。高い熱伝導性と保温性、そして食材の旨味を逃さない「アロマ・レイン」などの独自機能により、いつもの料理を格上げしてくれる魔法の鍋として知られています。その一方で、一般的なフッ素加工の鍋とは扱いが異なるため、「手入れが大変そう」「サビさせてしまうのではないか」と不安に感じる人も少なくありません。しかし、正しい知識を持てば、ストウブは決して扱いが難しいものではなく、むしろ適切なケアを続けることで「一生モノ」として孫の代まで受け継ぐことができる道具です。
本記事では、ストウブ鍋の基本的な洗い方から、必須と言われるシーズニングの手順、焦げ付いてしまった時の対処法まで、長く快適に使い続けるための手入れ方法を幅広く調査し、詳しく解説します。
目次
ストウブ鍋の正しい手入れとは?基本のシーズニング手順
ストウブ鍋を長く愛用するために最も重要となるのが、日常的な手入れと定期的なメンテナンスです。特に「シーズニング(油ならし)」と呼ばれる作業は、鍋の性能を維持し、焦げ付きやサビを防ぐために欠かせない工程です。ここでは、購入直後や使用の節目に行うべき基本のケアについて解説します。
購入後すぐに行うべきシーズニングの重要性
新品のストウブ鍋を手に入れたら、料理を始める前に必ずシーズニング(油ならし)を行うことが推奨されています。ストウブの内側には「黒マットエマイユ加工」という独自のザラザラとしたホーロー加工が施されており、この微細な凹凸に油を馴染ませることで、食材の焦げ付きを防ぎ、鍋肌を保護する効果が生まれます。
手順としては、まず鍋をお湯と中性洗剤で洗い、完全に乾かします。次に、少量の食用油(乾燥しにくい植物油がおすすめ)をキッチンペーパーなどに含ませ、鍋の内側全体に薄く塗り広げます。この際、鍋の縁(リム)の部分にも忘れずに塗ることが重要です。その後、弱火で数分間加熱し、油を馴染ませてから火を止めます。鍋が冷めるまで待ち、余分な油を拭き取れば完了です。この作業を最初に行うだけで、使い勝手が格段に向上します。
日常的な洗い方と洗剤選びのポイント
普段の料理で使用した後の洗い方は、基本的には他の鍋と同様に台所用の中性洗剤とスポンジを使用します。ただし、ストウブは蓄熱性が非常に高いため、使用直後の熱い状態で冷水をかけるなどの急激な温度変化を与えると、ホーロー質が破損(ヒートショック)する恐れがあります。必ず手で触れられる程度まで冷ましてから洗うか、ぬるま湯を使用するのが鉄則です。
洗う際は、研磨剤入りの洗剤や、硬いナイロンたわし、金属たわしなどは避ける必要があります。これらを使用すると、内側のエマイユ加工や外側の美しいカラーホーローに細かい傷がつき、そこから劣化が始まる原因となります。柔らかいスポンジで優しく汚れを落とし、汚れがひどい場合でも、ぬるま湯につけ置きをして汚れを浮かせてから洗うのが正解です。また、ストウブは食洗機の使用も可能とされていますが、頻繁な使用はホーローの艶を失わせる可能性があるため、長く美しく保つためには手洗いが推奨されるケースも多いです。
ホーロー加工を傷つけないための道具選び
手入れの一環として、調理中や洗浄中に使用する道具の素材にも注意を払う必要があります。ストウブの内側は耐久性の高い加工が施されていますが、金属製のヘラやレードル、鋭利なナイフなどを強く当てると傷がつくリスクがあります。傷がついた部分は焦げ付きやすくなったり、最悪の場合はホーローが剥がれてサビの原因になったりします。
そのため、調理には木製、シリコン製、あるいは耐熱プラスチック製のツールを使用することが推奨されます。これらは鍋肌への当たりが柔らかく、ホーローを傷つける心配がありません。同様に、洗う際も金属タワシではなく、柔らかい素材のものを選ぶことが重要です。道具選びに気を使うことも、広い意味での「手入れ」の一部であり、鍋の寿命を大きく左右します。
使用後の乾燥と保管方法の基本
洗い終わった後の「乾燥」は、サビを防ぐための最も重要なステップです。鋳物は水分に弱く、濡れたまま放置するとすぐにサビが発生してしまいます。洗った後は乾いた布で水分をしっかりと拭き取り、可能であればしばらく風通しの良い場所に置いて完全に乾燥させます。湿気の多い時期などは、軽く火にかけて水分を飛ばす方法も有効ですが、空焚きのしすぎには注意が必要です。
保管する際は、湿気の少ない場所を選びます。また、購入時に鍋と蓋の間に挟まっていたプラスチック製のピン(スペーサー)は捨てずに取っておき、保管時に再び挟むのが賢い方法です。これにより蓋と鍋の間に隙間が生まれ、通気性が確保されるため、内部に湿気がこもるのを防ぐことができます。もしピンを捨ててしまった場合は、キッチンペーパーを折り畳んで挟むことでも代用可能です。
ストウブ鍋のトラブル対処法とやってはいけない手入れ
どんなに大切に使っていても、料理中に焦げ付かせてしまったり、うっかりサビを出してしまったりすることはあります。しかし、ストウブはタフな鍋であり、適切な処置を行えばリカバリーが可能です。ここでは、よくあるトラブルへの対処法と、鍋をダメにしてしまうNG行為について解説します。
頑固な焦げ付きを落とす重曹テクニック
カレーやシチューなどの煮込み料理をした際、底が焦げ付いてしまうことがあります。この時、絶対にやってはいけないのが、金属たわしやスプーンでガリガリと擦り落とそうとすることです。物理的な力で削り取ろうとすると、ホーロー加工まで剥がしてしまう可能性があります。
頑固な焦げ付きには「重曹」を使った煮洗いが最も効果的で安全です。まず、鍋に焦げ付きが浸るくらいの水を張り、大さじ2〜3杯程度の重曹を入れます。中火にかけ、沸騰したら弱火にして10分〜15分ほど煮立たせます。その後、火を止めてお湯が冷めるまで放置します。この過程で重曹の成分が焦げをふやかし、浮かび上がらせてくれます。冷めた後にスポンジで軽く擦れば、驚くほどスルリと焦げが落ちます。一度で落ちない場合は、この工程を繰り返すことで解決できます。
サビが発生してしまった場合の対処法
ストウブは全体がホーローで覆われていますが、製造工程上、鍋の縁(リム)と蓋の縁の部分にはホーローがかかっていない箇所があり、鉄が露出しています。そのため、この部分に水分が残っているとサビが発生しやすくなります。もしサビを見つけても慌てる必要はありません。サビは表面的なものであることが多く、適切なケアで取り除くことができます。
サビてしまった場合は、市販のサビ取り用消しゴムや、クレンザーをつけた柔らかいスポンジで優しく擦り落とします。サビが落ちたら水洗いし、しっかりと水分を拭き取って乾燥させます。その後、シーズニングの要領でサビていた箇所に食用油を塗り込み、弱火で加熱して油を馴染ませます。これにより再び油膜ができ、サビの再発を防ぐことができます。縁の部分は特に油が抜けやすいため、定期的に油を塗ってメンテナンスすることが大切です。
鍋の寿命を縮めるNG行為と注意点
ストウブ鍋を長く使うためには、やってはいけない「NG行為」を知っておくことも重要です。前述した「急激な温度変化(ヒートショック)」や「金属たわしの使用」以外にも、注意すべき点はいくつかあります。
例えば、「強火での使用」は避けるべきです。ストウブは熱伝導が良いため、強火にする必要はほとんどなく、中火以下で十分調理が可能です。強火にかけると食材が焦げ付きやすくなるだけでなく、急激な温度上昇によりエマイユ加工が傷む原因になります。また、IHクッキングヒーターを使用する場合は、特に火力が強く伝わりやすいため、必ず弱火からスタートし、徐々に火力を上げる配慮が必要です。さらに、空焚きもホーローを劣化させる大きな要因となるため、シーズニングや乾燥のための短時間の加熱を除き、食材や水分が入っていない状態での加熱は厳禁です。
ストウブ鍋の手入れについてのまとめ
ストウブ鍋の手入れ方法についてのまとめ
今回はストウブ鍋の手入れについてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・ ストウブ鍋の性能を維持するには購入直後のシーズニングが必須である
・ シーズニングとは鍋の内側に食用油を塗り加熱して油を馴染ませる作業だ
・ 内側の黒マットエマイユ加工の凹凸に油が入り込み焦げ付きを防ぐ
・ 普段の洗浄は中性洗剤と柔らかいスポンジを使用するのが基本だ
・ 熱い状態の鍋に冷水をかけるなどの急激な温度変化は破損の原因になる
・ ホーローを傷つけないために金属製のヘラやたわしは避けるべきだ
・ 洗浄後は水分を完全に拭き取り乾燥させることがサビ防止の鍵となる
・ 保管時は専用ピンや布を挟んで蓋との間に通気性を確保すると良い
・ 頑固な焦げ付きは無理に擦らず重曹と水を入れて煮立たせて落とす
・ 鍋の縁は鉄が露出しているため水分が残るとサビが発生しやすい
・ サビが発生してもクレンザーで落として油を馴染ませれば修復可能だ
・ ストウブは熱伝導率が高いため調理は基本的に中火以下で行う
・ IHで使用する場合は変形を防ぐため弱火から徐々に温度を上げる
・ 頻繁な食洗機の使用はホーローの艶を損なう可能性があるため手洗いが推奨される
・ 定期的なメンテナンスを行うことでストウブは一生使える道具になる
ストウブ鍋は、少しの手間をかけることで愛着が湧き、料理の仕上がりも向上する素晴らしい調理器具です。難しい技術は必要なく、基本の「洗う・乾かす・油を塗る」というサイクルを守るだけで、その輝きを長く保つことができます。ぜひ今回ご紹介した手入れ方法を実践し、日々の食卓を彩るパートナーとして末永く愛用してください。


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